百歩譲ったわけではないけれど

東京国際映画祭市川崑監督の『その木戸を通って』。わりと正当派の時代劇だなー、と思って、ハイビジョン綺麗だなー、とかぼんやり観ていたのですが、あとで考えてみたらあそこで描かれていた家族観なり男女観のようなものって実に斬新だなーと驚きました。それは山本周五郎の原作がそうなのか、それとも脚本でああいうふうになったのか? たとえば素性も知れない娘をあっさりとお偉いさん(フランキー堺が好演)が養女にしたり、孫が生まれて男じゃなくて女だったのにむしろ全然喜んだり(酔いどれて目の座った石坂浩二が)。1993年に作られた映画だそうです。ちなみにオーチャードホールに行ったのって、いつだかにオペラだかクラシックのコンサートだかを観て以来な気がする。スクリーンがでかくて驚いた。


そのあと下北沢に出てイーハトーボでテルテルポーズの賢策さんの企画の収録。とある青年をゲストにお迎えしたのだけど、や、やはり、この人は逸材だ……!と思いました。すごく刺激的な話で、勉強にもなったし。うーん、話ができてよかった。帰りたくない&帰したくないので今成に移動。そして朝が近づき、彼の過去が明らかになるにつれて不思議な感慨を抱く。そういうことなら早く言ってよ、とか思ったりもするけれど、人ってそう簡単に自分のことを言わなかったりするし、簡単に説明できるものではないから、言えない、ということもあって、そのあたりの断念があらかじめ織り込まれている人と話をするのは、すごく気持ち的にラクというか楽しいものだなあと思いました。見えない領域をつねに孕んでいるというか。